生殖器・授乳の病気

【猫の乳腺炎】授乳中の猫の乳房が腫れる・熱い・化膿している場合の治療と子猫の授乳管理を解説

猫の乳腺炎 アイキャッチ

1. 猫の乳腺炎の概要:授乳期・偽妊娠期の乳腺感染症

猫の乳腺炎は、乳腺組織に細菌が感染して炎症・化膿が生じる疾患です。授乳中の母猫(産後2〜3週間以内)と偽妊娠の猫に多く見られます。重症化すると膿瘍形成・敗血症へと進行し、母猫の生命を脅かします。また、感染した乳汁を飲んだ子猫も体調不良・下痢・死亡のリスクがあります。

猫の乳腺炎・腫れて熱い乳房・膿の滲出(実写風イラスト)

2. 主な症状:乳房の腫れ・熱感・子猫の拒乳

1. 乳腺の腫脹・熱感・硬結

一つまたは複数の乳腺が腫れ・熱くなり・赤くなります。触ると痛がる場合が多く、母猫が子猫を授乳させるのを嫌がることがあります。

2. 乳汁の変色・膿

正常な乳汁は白っぽいですが、感染が進むと乳汁が黄色・茶色・血性になり、膿が混じることがあります。

3. 子猫の体重不増・哺乳拒否

感染した乳汁を飲んだ子猫は食欲不振・脱水・下痢が起きます。子猫が乳首にtつこうとしないのは、乳汁に変化があるサインの場合があります。

3. 原因:細菌感染と乳腺鬱滞

主な原因菌は大腸菌・ブドウ球菌・連鎖球菌です。子猫の爪・歯による乳首への傷から細菌が侵入します。離乳が急に行われると乳腺に乳汁が鬱滞して細菌の温床になることがあります。

猫の乳腺炎治療・抗生物質治療と子猫の人工哺乳(実写風イラスト)

4. 治療:抗生物質と乳汁の排出

1. 抗生物質の投与

培養感受性試験の結果または経験的にアモキシシリン・クラブランク酸配合剤が使用されます。授乳中でも使用できる抗生物質の選択が必要です。

2. 乳汁の排出

感染した乳腺から乳汁を定期的に排出することが重要です。膿瘍が形成された場合は切開・排膿が必要です。

3. 感染した乳腺からの子猫の分離・人工哺乳

感染した乳腺の乳汁を子猫に与えることを止め、人工哺乳(子猫用ミルク)に切り替えてください。軽症の場合は健康な乳腺からの授乳を継続できることもあります。

5. 予防:子猫の爪切りと徐々な離乳

定期的な子猫の爪切り(週1〜2回)が乳首への傷を予防します。離乳は徐々に行い、急激な断乳は避けてください。授乳期の母猫の乳腺を毎日観察し、腫れ・熱を早期発見することが重要です。

6. よくある質問(FAQ)

Q:母猫の乳腺が腫れているのに、子猫は感染した乳汁を飲んでいて大丈夫でしょうか?
A:感染した乳汁を子猫に与え続けることは危険です。感染乳汁を飲んだ子猫は消化器症状(下痢・嘔吐)・脱水・最悪の場合敗血症となることがあります。感染した乳腺からの授乳を止め、子猫用人工ミルクへ切り替えてください。母猫・子猫ともに今日中に受診することを推奨します。

7. まとめ

猫の乳腺炎は授乳期の母猫に起きる急性の細菌感染症です。乳房の腫れ・熱感・乳汁の変色を発見したら早期に受診し、適切な抗生物質治療を受けてください。感染した乳汁は子猫にも危険なため、人工哺乳への切り替えと迅速な治療が母子両方の命を守ります。


※ 本記事は日本専門産科婦人科学会・WSAVA授乳期管理ガイドラインに基づき作成されています。必ずかかりつけの動物病院でご相談ください。


命を守るための緊急メッセージ:「様子を見る」は最も危険な選択

愛犬・愛猫の健康を守る上で、もっとも多く聞かれる後悔の言葉は「もっと早く連れて来ればよかった」というものです。猫は人間と違い、体調不良を本能的に隠します。なぜなら、野生では弱みを見せることが天敵に狙われる致命的なリスクになるからです。つまり、あなたが「普通見える」と感じた時でも、猫はすでに相当な苦痛を耐えながら生活している可能性があります。

特に以下の兆候は、24時間以内の受診が必要な緊急サインです:

  • 🚨 2日以上続く食欲不振または拒食──猫は脂肪動員が起き、肝臓が危機的状態になる可能性があります
  • 🚨 嘔吐や下痢が1日3回以上──脱水・電解質異常で急変するリスクがあります
  • 🚨 呼吸が速い・荒い・口を開けている──心肺の重大異常を示している可能性があります
  • 🚨 歯茎が白・青・紫・灰色──貧血・チアノーゼの深刻なサインです
  • 🚨 尿が1日以上出ていない──腎不全・尿道閉塞の可能性があります

自宅でできる緊急チェックリスト

チェック項目 正常 要注意・受診検討 緊急受診
食欲 普段通り食べる 食欲減退(半量以下) 2日以上拒食
水分摂取 通常量を飲む 明らかに増減している まったく飲まない
排泄 通常の回数・量・色 軟便・少量・頻回 血便・血尿・48h排泄なし
活動性 普段通り動く 元気が少しない 立てない・反応なし
呼吸 静かで規則的 少し速い(30回/分以上) 口呼吸・荒呼吸
歯茎の色 ピンク(鮮やか) 淡いピンク・白みがかる 白・紫・灰色
体温 38.0〜39.2℃ 39.3〜40.0℃ 40℃以上または37℃未満

健康な猫を育てる「予防の黄金ルール」

  1. 年1〜2回の健康診断──無症状でも血液検査・尿検査で隠れた病気を早期発見できます。シニア(7歳以上)は半年に1回が推奨されます。
  2. コアワクチンの毎年接種──猫は混合ワクチンが基本です。抗体価検査で接種間隔を調整する方法もあります。
  3. ノミ・マダニ・フィラリア予防の通年継続──月1回の投薬で多くの寄生虫感染を防ぐことができます。冬場も屋内のノミは生存し続けます。
  4. 口腔ケアの習慣化──歯周病は腎臓・心臓・肝臓に悪影響を与える全身疾患の原因になります。週3回以上の歯磨きが理想です。
  5. 適切な体重管理──肥満は糖尿病・関節炎・心臓病のリスクを倍増させます。定期的な体重測定と食事量の見直しを。
  6. ストレスフリーな環境──猫のストレスは免疫力を低下させ、様々な疾患の発症リスクを高めます。安全な隠れ場所・一定のルーティン・十分なスキンシップが大切です。

動物病院との付き合い方:「かかりつけ医」の重要性

「かかりつけの動物病院」を持つことは、愛猫の健康管理において非常に重要です。かかりつけ医がいることで:

  • ✅ 過去の病歴・薬のアレルギー・体重変化の記録が蓄積される
  • ✅ 緊急時に「いつもと違う」変化を医師が把握しやすくなる
  • ✅ セカンドオピニオンが必要な場合の紹介先を得られる
  • ✅ 「電話で相談」できる関係性が築けると、緊急度の判断がしやすくなる

近くに夜間・救急対応の動物病院があるか、今日中に調べておくことをお勧めします。緊急時に慌てて探すより、事前に「備え」があることで、愛猫の命を守る時間を確保できます。