【犬の白内障】目が白い・ぶつかるのは末期の兆候?失明を防ぐ手術と目薬、老化との見分け方を

当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています

犬の白内障をご存知でしょうか。
愛犬の瞳が白く濁ってきた、暗い場所でよくぶつかるようになった、飼い主を見つけるのに時間がかかるようになった――これらは白内障による視力低下のサインかもしれません。犬の白内障は高齢化とともに増加しており、放置すると最終的に失明に至ることもある進行性の眼科疾患です。

本記事では、犬が白内障になってしまう原因から、進行段階別の症状・眼科検査の内容・手術(水晶体乳化吸引術)・点眼薬・費用の目安、そして毎日の暮らしでできる視力保護のポイントまでを分かりやすく徹底解説します。

犬の白内障の受診の目安

早めに受診
目が白っぽく濁ってきた、夜に物にぶつかるとき
治療と見通し
点眼薬では治らず、根本的な治療は手術のみ。続発するぶどう膜炎・緑内障を防ぐため定期的な診察を

迷ったときは 受診の目安とチェックリスト も確認してください。

1. 白内障とは:水晶体が白く濁る進行性の眼疾患

白内障(はくないしょう)は、眼球内の「水晶体(すいしょうたい)」と呼ばれるレンズ状の組織が白く濁る疾患です。水晶体は通常は透明で、外部からの光を屈折させて網膜上に焦点を結ぶ役割を担います。白濁が進むと光が適切に網膜に届かなくなり、視力が徐々に低下します。

犬の白内障は人の白内障と類似した病態を持ちます。加齢性のものが多いですが、糖尿病・遺伝・外傷など様々な原因で若齢でも発症します。特に糖尿病性白内障は、診断から数週間〜数か月で急速に進行することがあり注意が必要です。

なお、老犬の目が白く見える状態として「核硬化症(かくこうかしょう)」があります。核硬化症は水晶体の老化による正常な変化であり、視力への影響は軽微です。白内障との鑑別には獣医師による細隙灯(さいげきとう)検査が必要です。

白内障が進行すると続発性緑内障(つづはつせいりょくないしょう)や水晶体誘発性ぶどう膜炎(もうまくゆうどうまくえん)を引き起こし、さらなる視力障害や眼球の萎縮につながる可能性があります。早期発見・早期対応が眼の機能を守る上で重要です。

2. 主な症状とサイン:進行段階で変わる変化

瞳が白く濁ったシニア犬の顔のクローズアップ(実写風)

白内障は進行の程度によって症状が異なります。以下の変化に気づいたら早めに受診してください。

  • 瞳孔(どうこう)部分が白〜灰白色に濁って見える
  • 暗い場所でよくぶつかるようになった(夜間視力の低下)
  • 慣れた部屋でも家具にぶつかる・段差で転ぶ
  • おもちゃやボールを目で追えなくなった
  • 飼い主の顔を認識するのに近づかないと反応しない
  • 目を細める・眩しがる・目をこする(続発性ぶどう膜炎の兆候)
  • 目が赤い・充血している(続発性緑内障・炎症の兆候)
進行段階 水晶体の状態 視力への影響
初期(incipient) 水晶体の一部が薄く濁り始める ほぼ正常〜軽度低下
未熟(immature) 濁りが水晶体の一部〜大部分に広がる 視力低下が始まる
成熟(mature) 水晶体全体が完全に白濁 著しい視力低下〜光覚のみ
過熟(hypermature) 水晶体が縮小・液化・崩壊 ほぼ失明・炎症リスク増大

過熟白内障になると、水晶体のタンパク質が漏れ出して重篤なぶどう膜炎・緑内障を引き起こすリスクが高まります。手術適応は成熟以前が理想的です。

3. 発症の原因と好発犬種

動物病院で眼科検査機器を使って犬の目を診察する獣医師(実写風)

犬の白内障の原因は複数あります。

遺伝性・先天性白内障

特定の犬種では遺伝的に白内障を発症しやすいことが知られています。若齢(1〜5歳)での発症が多く、両眼性であることが特徴です。好発犬種としては以下が挙げられます。

  • ゴールデンレトリーバー
  • ラブラドールレトリーバー
  • プードル(トイ・ミニチュア・スタンダード)
  • コッカースパニエル
  • ボストンテリア
  • シベリアンハスキー

加齢性白内障

最も多い原因です。8歳以上のシニア犬に多く見られます。加齢による水晶体タンパクの変性・酸化ストレスの蓄積が主因と考えられています。

糖尿病性白内障

糖尿病を持つ犬の約70〜80%が診断後1年以内に白内障を発症するとされています。血糖上昇によって水晶体内に異常なソルビトールが蓄積し、急速に白濁が進行します。糖尿病のコントロールが眼科的管理と並行して重要です。

外傷性・続発性白内障

眼への打撃・穿通傷(せんつうしょう)・ぶどう膜炎・網膜変性・水晶体脱臼(だっきゅう)などに続発して白内障が発生することがあります。

栄養性白内障

授乳期の栄養不足・不適切なミルク代替品で育てた子犬で報告されています。

4. 診断から治療の選択肢:手術が根治的治療の中心

診断のステップ

  1. 細隙灯(スリットランプ)検査:水晶体の濁りの範囲・程度・位置を精密に評価します。核硬化症との鑑別も行います。
  2. 眼圧測定(トノメトリー):続発性緑内障の有無を確認します。正常眼圧は10〜25mmHgです。
  3. 網膜電位検査(ERG:Electroretinography):手術前に網膜の機能を評価します。網膜変性が進んでいると手術後の視力回復が期待できないため必須の検査です。
  4. 眼底検査・超音波検査:水晶体の後方構造・網膜・硝子体の状態を評価します。
  5. 全身検査:糖尿病・高血圧などの基礎疾患の有無を確認します。

治療の選択肢

外科治療:水晶体乳化吸引術(Phacoemulsification)

白内障の根治的治療は手術のみです。超音波で水晶体を砕いて吸引し、人工眼内レンズ(IOL)を挿入する「水晶体乳化吸引術」が標準的な方法です。成熟前(immature〜mature)の段階で手術を行うと視力回復率が高くなります。手術後の視力回復率は約90%程度とされています。

内科的管理・点眼薬

白内障そのものを薬で治す薬剤は現在のところ存在しません。しかし以下の目的で点眼薬が使われます。

  • ぶどう膜炎の抑制:NSAIDs点眼・ステロイド点眼で炎症を管理します。
  • 緑内障の予防・管理:眼圧を下げる点眼薬(ドルゾラミド・ラタノプロストなど)を使用します。
  • 抗酸化点眼(ランシノール):白内障の進行を遅らせる可能性が示唆されていますが、根拠はまだ限定的です。

費用目安

治療内容 費用目安
眼科精密検査(ERG含む) 20,000〜60,000円
点眼薬(月額) 3,000〜8,000円
水晶体乳化吸引術(片眼) 15〜30万円
水晶体乳化吸引術(両眼) 25〜50万円

5. 予防のポイント:早期発見と基礎疾患のコントロール

  • 定期的な眼科チェック:7歳以上のシニア犬・白内障好発犬種は年1〜2回の眼科検診を受けてください。
  • 糖尿病の早期発見と適切な管理:多飲多尿・体重減少が続く場合は血糖検査を受けてください。糖尿病の管理が白内障の進行スピードに直結します。
  • 毎日の瞳チェック:グルーミング時に瞳の色・透明度・左右差を観察する習慣をつけてください。
  • 眼への外傷予防:木の枝が密生した藪への突進・他の犬とのけんかなど、眼を傷つけるリスクのある状況に注意してください。
  • 好発犬種では早めの繁殖検査:遺伝性白内障の好発犬種をブリーディングする場合は、眼科的スクリーニングを事前に行うことが有益です。

6. よくある質問(FAQ)

Q:老犬の目が白いのは白内障ですか?核硬化症と違うのですか?
A:老犬の目が白く見える原因には白内障と核硬化症(かくこうかしょう)の2つがあります。核硬化症は加齢による水晶体の正常な変化で、視力への影響は軽微です。白内障は水晶体が病的に白濁し視力低下を引き起こします。細隙灯(スリットランプ)検査でないと区別できないため、目が白く見えたら受診して確認することをお勧めします。
Q:手術を受ければ必ず見えるようになりますか?
A:手術前の網膜機能検査(ERG)で網膜が正常に機能していることが確認できれば、約90%の症例で視力の改善が期待できます。ただし網膜変性・続発性緑内障が進行している場合は、手術後の視力回復が得られないことがあります。事前の精密検査が非常に重要です。
Q:目薬(点眼薬)だけで白内障は治りますか?
A:現在のところ、白内障を治す点眼薬は存在しません。点眼薬の役割は、続発するぶどう膜炎・緑内障の管理や進行の緩和です。根治的治療は手術のみです。「効くと宣伝している点眼薬」には十分な科学的根拠がないものも多く、自己判断での使用は避け、必ず獣医師に相談してください。
Q:手術は全身麻酔が必要ですか?リスクはありますか?
A:はい、全身麻酔が必要です。麻酔リスクは年齢・全身状態・基礎疾患の有無によって異なります。手術前に血液検査・心電図・胸部X線などで全身評価を行い、麻酔リスクを最小化します。高齢犬でも適切な術前評価と麻酔管理により安全に実施できるケースが多くあります。
Q:手術しない場合はどうなりますか?
A:白内障は放置すると過熟段階に進行し、水晶体タンパクが漏れ出して重篤なぶどう膜炎・続発性緑内障を引き起こすリスクがあります。緑内障に至ると激しい疼痛と視力の不可逆的喪失につながります。手術適応外の場合でも、定期的な眼圧測定と点眼薬による管理が必要です。
Q:視力が低下した犬との生活で気をつけることはありますか?
A:家具の配置を急に変えない・段差にスロープを設置する・においのあるマーカー(香り付きのタグなど)でルートを示す・声掛けを多くして安心感を与えるなどの環境整備が有効です。視力が低下した犬でも嗅覚・聴覚を使って日常生活に十分適応できます。

7. まとめ

薄暗い室内でゆっくり歩く老犬と付き添う日本人女性飼い主のようす(実写風)

犬の白内障は、水晶体の白濁によって視力が段階的に低下する進行性の眼疾患であり、手術(水晶体乳化吸引術)が唯一の根治的治療です。糖尿病・遺伝・加齢などリスク因子を持つ犬では早期からの眼科チェックが大切で、成熟前に手術を受けることで約9割の症例で視力回復が期待できます。瞳の白濁・夜間のぶつかりなど小さな変化を見逃さないことが大切です。

異変を感じたら決して放置せず、速やかに動物病院を受診して、愛犬にとって最善の医療的選択を冷静に進めていきましょう。

Amazonでペット用品を探す おすすめ記事を見る

様子を見ずに、その日のうちに受診してほしいサイン

犬や猫は体調不良を隠す動物です。愛犬に次のどれかが当てはまるときは、この記事の病気に限らず、動物病院に相談してください。

  • 食欲がない・食べない状態が2日以上続く
  • 嘔吐や下痢が1日3回以上
  • 呼吸が速い・荒い、口を開けて呼吸している
  • 歯茎や舌の色が白い・青紫・灰色
  • おしっこが1日以上出ていない

自宅でできる緊急チェックリストと受診の目安を見る


※本記事は医学・科学的知見の一般的知識に基づき作成されています。愛犬の具体的な診断や治療については、必ず動物病院の診察を受けてください。白内障の手術適応の判断には網膜電位検査(ERG)など専門的な眼科検査が必要であり、眼科専門外来を持つ動物病院への受診が推奨されます。

参考文献

この記事の内容に関する主な資料です(英語の資料を含みます)。

  1. 獣医学の参考書MSD Veterinary Manual「The Lens in Animals」
  2. 飼い主向け解説MSD Veterinary Manual「Disorders of the Lens in Dogs」