【猫の乳腺炎】授乳中の猫の乳房が腫れる・熱い・化膿している場合の治療と子猫の授乳管理を解説

当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています

猫の乳腺炎をご存知でしょうか。
授乳中の母猫の乳房が急に腫れて硬くなり、触れると嫌がる・子猫に授乳させなくなるといった変化が現れた場合、乳腺炎(にゅうせんえん)を起こしている可能性があります。乳腺炎は乳腺組織に細菌感染が起きた状態で、放置すると膿瘍(のうよう:膿がたまった塊)の形成や壊死性乳腺炎という重篤な状態へと進行する疾患です。

本記事では、猫が乳腺炎になってしまう原因から、乳房の腫れ・熱感・乳汁の変化などの主な症状、抗菌薬・外科処置の治療選択肢と費用目安、そして毎日の暮らしでできる予防策までを分かりやすく徹底解説します。

猫の乳腺炎の受診の目安

すぐに受診夜間・休日でも
乳房が紫〜黒く変色する・悪臭がある、高熱でぐったり
早めに受診
授乳中の乳房が腫れる・熱い・硬いとき(自然に治るのはごく軽い場合のみ)
治療と見通し
軽症は抗菌薬で回復する。膿がたまったり壊死したりすると手術が必要になる

迷ったときは 受診の目安とチェックリスト も確認してください。

1. 猫の乳腺炎の概要

乳腺炎とは、乳腺(にゅうせん:乳汁を産生する腺組織)に細菌感染が起きて炎症が生じた状態を指します。猫には通常4対8個の乳頭があり、そのうちの1個〜複数個に発症することがあります。

猫の乳腺炎は主に授乳期(分娩後)に発症します。分娩後数週間以内の授乳期の母猫が最も罹患しやすく、子猫の爪・歯による乳頭の傷が細菌感染の入り口となります。また離乳後に乳汁が乳腺内に残留することで発症するケースも見られます。

乳腺炎の重症度は軽症(浮腫性乳腺炎)から重症(壊死性乳腺炎・敗血症)まで幅があります。軽症であれば抗菌薬による内科治療で回復しますが、膿瘍形成・壊死性乳腺炎に進行した場合は外科的処置(切開・壊死組織の除去)が必要になります。授乳中の母猫と子猫の両方の健康に影響するため、早期発見と早期治療が重要です。

乳腺炎のリスクが高い状況

  • 多頭の子猫を哺育している授乳期の母猫
  • 子猫が少なく乳汁が過剰産生されている状態(乳汁うっ滞)
  • 突然の離乳・子猫を失った直後
  • 乳腺嚢胞や過去の乳腺疾患の既往
  • 免疫力が低下した状態(栄養不良・感染症の後など)

2. 主な症状とサイン:乳房の変化に注意

子猫に授乳する母猫の様子を観察する飼い主(実写風)

乳腺炎の症状は炎症の程度によって軽症から重症まで段階があります。飼い主が観察できる乳房の変化と、母猫の全身状態の変化の両方に注目することが早期発見の鍵です。

乳房に現れる局所症状

  • 患部の乳腺・乳房の腫れ・硬化
  • 触れると温かい(熱感)
  • 触れると嫌がる・引っかく(疼痛)
  • 乳汁の色・性状の変化(黄色・茶色・血混じり・膿状)
  • 乳頭周囲の皮膚の発赤・潰瘍・かさぶた
  • 壊死性乳腺炎では皮膚が紫〜黒色に変色し悪臭を伴う

母猫の全身症状

  • 食欲低下または拒食
  • 発熱・元気消失・うずくまり
  • 子猫への授乳を拒否するようになる
  • 乳房を過度に舐める
  • 重症例では脱水・嗜眠(しみん:強い眠気・意識混濁)・ショック症状

乳腺炎の重症度分類

重症度 局所所見 全身所見
軽症(浮腫性) 腫れ・硬さ・熱感あり。乳汁は出るが性状変化 軽度の食欲低下・授乳を嫌がる
中等症(膿瘍形成) 波動性のある腫瘤(膿がたまる)・皮膚発赤 発熱・食欲不振・元気消失
重症(壊死性) 皮膚の変色(紫〜黒)・悪臭・組織壊死 高熱・脱水・嗜眠・ショックの可能性

壊死性乳腺炎は発症から急速に悪化するため、乳房の皮膚が暗紫色に変色している場合は緊急性が高い状況です。速やかな受診が求められます。

3. 乳腺炎の原因とリスク因子

子猫が母猫の乳房で授乳している様子(実写風)

猫の乳腺炎の最も多い原因は細菌感染です。感染経路と主な原因菌、発症を促すリスク因子を以下に整理します。

感染経路

  • 乳頭からの上行性感染(最多):子猫の爪・歯による乳頭の傷・擦り傷から細菌が侵入し、乳管を通じて乳腺内に上行する
  • 血行性感染:全身感染症を起こしている母猫で血流を介して乳腺に細菌が到達するケース
  • 乳汁うっ滞からの二次感染:乳汁が乳腺内に停滞することで細菌が増殖しやすい環境ができる

主な原因菌

大腸菌(E. coli)・ブドウ球菌・連鎖球菌・パスツレラ菌などが多く検出されます。これらは猫の皮膚・口腔内に常在する細菌であり、乳頭に小さな傷があることで感染が成立します。

乳腺炎を起こしやすいリスク因子

  • 授乳期の乳汁過剰産生(子猫の数が少ない・子猫を早期に離した)
  • 不衛生な分娩・授乳環境
  • 子猫の爪が長い・噛み方が強い
  • 乳房周囲の傷・皮膚炎の既往
  • 免疫抑制状態(栄養不良・慢性疾患・ステロイド投与中)
  • 多産・分娩後の母体の疲弊

4. 診断と治療法・費用目安

乳腺炎の診断は身体検査と乳汁の性状観察が中心となります。重症度の評価・起因菌の同定・母猫と子猫の全身状態の把握を並行して行います。

診断ステップ

  1. 身体検査:乳房の腫れ・熱感・疼痛・皮膚変色の確認。全身状態(体温・脱水・意識レベル)の評価
  2. 乳汁検査:性状の肉眼観察・顕微鏡検査(炎症細胞・細菌の確認)
  3. 細菌培養・薬剤感受性試験:適切な抗菌薬選択のために実施
  4. 血液検査:炎症マーカー(CRP・白血球数)・全身状態の評価
  5. 超音波検査:膿瘍の有無・範囲・波動性の確認

治療選択肢

治療法 内容・適応
抗菌薬(全身投与) 軽症〜中等症の乳腺炎の基本治療。感受性試験の結果に基づいて選択する。授乳中の母猫に使用する場合は子猫への移行に注意が必要
温罨法(おんあんぽう) 軽症例では患部を温かいタオルで温めることで血行を促進し、乳汁のうっ滞を解消する補助療法。炎症部位の排液を促す
膿瘍切開・ドレナージ 膿瘍が形成されている場合、切開・排膿・洗浄を行う。全身麻酔下または局所麻酔下で実施
壊死組織の外科的除去 壊死性乳腺炎では壊死した組織を切除する。患部乳腺の全切除が必要になる場合もある
子猫の保護・人工哺育 母猫が授乳できない場合・感染乳汁を子猫が摂取するリスクがある場合は子猫を分離して人工哺育(ミルクの人工投与)に切り替える
輸液療法・全身管理 重症例での脱水補正・循環動態の安定化・栄養補給

感染乳汁と子猫への対応

乳腺炎の母猫の乳汁には細菌・毒素が含まれることがあります。子猫が感染乳汁を飲み続けると下痢・全身感染症・死亡のリスクがあります。乳腺炎が診断された場合は担当獣医師の指示のもと、患側乳腺からの授乳を中止し、人工哺育への切り替えを検討することが求められます。

費用目安(参考)

処置内容 費用目安(参考)
初診・身体検査・乳汁検査 3,000〜8,000円
血液検査 5,000〜12,000円
細菌培養・薬剤感受性試験 5,000〜12,000円
抗菌薬・内科治療(1〜2週間) 5,000〜20,000円
超音波検査 5,000〜10,000円
膿瘍切開・ドレナージ(麻酔含む) 20,000〜50,000円
乳腺切除術+入院 60,000〜150,000円

軽症で早期に治療できた場合は内科治療のみで完結し、費用は比較的抑えられます。壊死性乳腺炎・膿瘍形成例では外科処置・入院費が加わるため、早期発見・早期受診が費用面でも重要です。

5. 予防のポイント:授乳環境の衛生管理と早期察知

乳腺炎の多くは授乳期の管理と衛生環境を整えることで予防・軽症化が期待できます。以下のポイントを実践しましょう。

  • 子猫の爪を定期的に切る:子猫の爪による乳頭の傷が感染の入り口となります。授乳期は子猫の爪を短く保つことが有効な予防策です
  • 清潔な分娩・授乳環境を整える:分娩箱や授乳スペースは清潔を保ち、床材を定期的に取り替えましょう。不衛生な環境は細菌感染のリスクを高めます
  • 授乳状況を毎日観察する:乳房の腫れ・色の変化・母猫が授乳を嫌がるなどの変化に早期に気づくことが重要です。1日1回、乳房を軽く触れてチェックしましょう
  • 離乳は段階的に行う:突然の離乳は乳汁うっ滞・乳腺炎のリスクを高めます。子猫の離乳は徐々に授乳回数を減らしながら行い、必要に応じて搾乳(さくにゅう)で乳汁を適宜排出します
  • 避妊手術の検討:繁殖を考えていない場合は避妊手術(卵巣子宮摘出術)を受けることで乳腺炎・乳腺腫瘍のリスクを下げることができます。特に初回発情前の手術は乳腺腫瘍のリスク低減効果が高いとされています

授乳期の乳房チェック方法

チェック項目 正常所見 要注意のサイン
乳房の大きさ・左右差 授乳に伴う適度な張り・左右概ね対称 一部だけ著しく腫れている・硬い
乳汁の色・性状 白色〜クリーム色・滑らか 黄色・茶色・血性・膿状・悪臭
皮膚の色・温度 通常のピンク色・体温程度 発赤・著しい熱感・紫〜黒色変化
触れたときの反応 多少は触れさせる 強く嫌がる・鳴く・逃げる
授乳行動 子猫を受け入れて授乳させる 子猫を追い払う・授乳を拒否する

6. よくある質問(FAQ)

Q:授乳中の母猫の乳房が腫れています。自然に治りますか?
A:乳房の腫れがある場合、乳腺炎の可能性があります。自然治癒が期待できるのは非常に軽微な乳汁うっ滞のみで、細菌感染を伴う乳腺炎は抗菌薬などの治療が必要です。様子を見ているうちに膿瘍形成・壊死性乳腺炎に進行するリスクがあるため、腫れを発見したら速やかに動物病院を受診することが大切です。
Q:乳腺炎の母猫の乳を子猫に飲ませても大丈夫ですか?
A:乳腺炎の患部からの乳汁には細菌・毒素が含まれることがあります。子猫が摂取すると下痢・嘔吐・全身感染症を引き起こすリスクがあります。乳腺炎が診断された場合は担当獣医師の指示のもと、患側乳腺からの授乳を中止し、人工哺育ミルクへの切り替えを検討することが求められます。患側でない健常な乳腺からの授乳については獣医師に相談してください。
Q:乳腺炎の治療中、子猫はどうすればいいですか?
A:母猫が授乳できない期間は子猫を分離して、子猫用の人工哺育ミルクで対応します。子猫専用のミルク(牛乳は不適切)を適切な温度と頻度で与えることが必要です。授乳方法・頻度・量については動物病院でアドバイスを受けることが有益です。子猫の体重・排泄・活力を毎日チェックし、問題があれば速やかに受診してください。
Q:壊死性乳腺炎はどんな状態で、助かりますか?
A:壊死性乳腺炎は乳腺組織が壊死・腐敗した重篤な状態で、皮膚が暗紫〜黒色に変色し強い悪臭を伴います。敗血症・ショックへの進行リスクがあり、緊急の外科処置と全身管理が必要です。早期に適切な外科処置(壊死組織の切除・洗浄・輸液管理)を受けることで救命できるケースもありますが、発見が遅れるほど予後は不良となります。乳房の皮膚が変色している場合は緊急受診が必要です。
Q:乳腺炎と乳腺腫瘍の違いは何ですか?
A:乳腺炎は感染・炎症による乳腺の腫れで、熱感・疼痛・乳汁異常を伴う急性の変化が特徴です。乳腺腫瘍は乳腺組織に発生した腫瘍(良性または悪性)で、硬いしこりとして触れることが多く、通常は熱感・疼痛が少ない傾向があります。ただし外見上の区別は難しいため、乳房のしこり・腫れを発見した場合は動物病院での診察が必要です。
Q:未出産の猫でも乳腺炎になりますか?
A:非常にまれですが、偽妊娠(ぎにんしん:妊娠していないのに乳汁が分泌される状態)の際に乳汁うっ滞から乳腺炎を起こすことがあります。乳腺の腫れや乳汁の分泌が見られる場合は授乳歴・妊娠歴にかかわらず受診することが大切です。また避妊手術を受けていない猫では乳腺腫瘍のリスクも高まるため、定期的な乳腺チェックが有益です。

7. まとめ

動物病院で乳房を診察される母猫(実写風)

猫の乳腺炎は授乳期の母猫に多く見られる細菌感染性疾患で、乳房の腫れ・熱感・乳汁性状の変化・母猫の全身状態悪化が主な徴候です。軽症であれば抗菌薬による内科治療で回復しますが、壊死性乳腺炎や膿瘍形成に進行した場合は外科的処置が必要となり、予後にも影響します。子猫の爪管理・清潔な授乳環境・日常的な乳房チェックが発症予防と早期発見の両面で有効な取り組みです。

異変を感じたら決して放置せず、速やかに動物病院を受診して、愛猫にとって最善の医療的選択を冷静に進めていきましょう。

Amazonでペット用品を探す おすすめ記事を見る

様子を見ずに、その日のうちに受診してほしいサイン

犬や猫は体調不良を隠す動物です。愛猫に次のどれかが当てはまるときは、この記事の病気に限らず、動物病院に相談してください。

  • 食欲がない・食べない状態が2日以上続く
  • 嘔吐や下痢が1日3回以上
  • 呼吸が速い・荒い、口を開けて呼吸している
  • 歯茎や舌の色が白い・青紫・灰色
  • おしっこが1日以上出ていない

自宅でできる緊急チェックリストと受診の目安を見る


※本記事は医学・科学的知見の一般的知識に基づき作成されています。愛猫の具体的な診断や治療については、必ず動物病院の診察を受けてください。授乳中の母猫に抗菌薬を使用する際は子猫への薬剤移行に注意が必要であり、必ず獣医師の指示に従ってください。

参考文献

この記事の内容に関する主な資料です(英語の資料を含みます)。

  1. 獣医学の参考書MSD Veterinary Manual「Mastitis in Small Animals」
  2. 飼い主向け解説MSD Veterinary Manual「Reproductive Disorders of Female Cats」